お知らせ

2026.08.26(Wed) がんじゅ

就労選択支援 の現場から ! 「働きたくない」のではなく本当は「働くのが怖かった」

「働きたくない」のではなく、「働くのが怖かった」

「本人は、働くことを希望していません。」 就労選択支援 の相談では、そんなお話から始まることがあります。 保護者の方も、学校の先生も、本人の意思を尊重しようとしています。 本人自身も、はっきりと、 「働きたくないです」 と話します。 では、本当に「働きたくない」のでしょうか。 私たちは、そこで結論を急がないようにしています。

「働きたくない」という言葉の奥には、まだ言葉になっていない思いがあるかもしれません。

尼崎市 就労選択支援 働く

「働きたくない」と話していた本人

あるケースを、個人が特定されないよう内容を再構成してご紹介します。 その方は、将来について聞かれると、いつも「働きたくない」と答えていました。 周囲から見ると、仕事への興味もあまりなく、積極的に就職を目指しているようには見えませんでした。 保護者の方も、 「このまま働かなくてもいいのでしょうか?」 「本人がそう言うなら、無理に働かせない方がいいのでしょうか?」 と悩んでいました。 そこで、私たちは「なぜ働きたくないのですか?」と、何度も理由を問い詰めることはしませんでした。 まずは、本人が安心して過ごせる環境の中で、いろいろな話をすることから始めました。  

少しずつ見えてきた「怖さ」

話を重ねていくと、少しずつ本人の過去の経験が見えてきました。 以前、仕事に近い活動をした際、周囲から急かされた経験があったこと。 分からないことを質問できず、一人で抱え込んでしまったこと。 失敗したときに、「自分は仕事ができない」と強く感じてしまったこと。 そして、次第に「また同じことになるのではないか」という不安が強くなっていたこと。 本人が「働きたくない」と話していた背景には、仕事そのものへの拒否感だけではなく、 「また失敗するのが怖い」 「迷惑をかけるのが怖い」 「どうせ自分にはできない」 という思いがありました。

「働きたくない」のではなく、「働くことに対する不安が大きかった」のかもしれません。  

言葉だけで判断すると、見えなくなるものがある

本人が「働きたくない」と言っている。 その言葉を尊重することは、とても大切です。 しかし、尊重することと、言葉だけで結論を出すことは同じではありません。 「働きたくない」という言葉の背景には、さまざまな理由が考えられます。

  • 仕事そのものに興味がない
  • 人間関係への不安がある
  • 失敗することが怖い
  • 体力や体調に自信がない
  • 自分にできる仕事が分からない
  • 過去の経験から働くことに苦手意識がある

同じ「働きたくない」という言葉でも、その意味は一人ひとり違います。 だからこそ、 就労選択支援 では、本人の言葉を「入口」として捉えることを大切にしています。  

「働く」をいきなり目標にしなくてもいい

では、「働きたくない」と話す人に、どうすればよいのでしょうか。 私たちは、いきなり「就職」を目標にする必要はないと考えています。 まずは、安心してその場にいられること。 次に、何か一つの作業を経験してみること。 そして、「思ったよりできた」「これは意外と嫌ではなかった」という経験を積み重ねていくこと。 小さな経験から、本人の見方が変わることがあります。 「働く」という言葉を聞いただけで不安になっていた人が、作業を経験した後に、 「こういう仕事なら、やってみてもいいかもしれない」 と話すことがあります。 それは、「働くことが好きになった」ということではありません。 けれど、少なくとも「働く=怖い」だけではなくなった。 その変化には、大きな意味があります。  

私たちが見ているのは「やる気」だけではありません

就労選択支援 では、「仕事への意欲があるか」という視点ももちろん大切です。 しかし、それだけで本人を判断することはありません。 今、どんな不安を抱えているのか。 どんな経験が本人の自信を失わせているのか。 どんな環境なら安心して取り組めるのか。 何をきっかけに「やってみよう」と思えるのか。 そうしたことを一つひとつ確認していきます。 本人の「やる気」を引き出すことだけが支援ではありません。 「やってみても大丈夫かもしれない」と思える環境をつくることも、支援の一つです。  

本人の言葉を、本人と一緒に深掘りする

就労選択支援 のアセスメントで大切なのは、支援者が本人の答えを決めることではありません。 「働きたくない」という言葉があったとしても、 「本当に働きたくないのか」 「何が怖いのか」 「どんな環境なら安心できるのか」 「少しならやってみたいことはあるのか」 本人と一緒に考えていきます。 そして最終的には、本人自身が自分の気持ちを理解し、進路を選択できることを目指します。

支援者が「本当は働きたいんですよ」と決めつけるのではなく、本人が「自分はどうしたいのか」に気づいていく。  

まとめ

「働きたくない」という言葉は、その人の大切な意思です。 だからこそ、簡単に否定してはいけません。 一方で、その一言だけで本人の未来まで決めてしまう必要もありません。 その言葉の背景には、まだ本人自身も気づいていない思いがあるかもしれません。 就労選択支援 では、本人の言葉を大切にしながら、その背景にある思いや不安、希望にも目を向けます。 そして、さまざまな経験を通して、本人が「自分はどうしたいのか」を考えていきます。 私たちが大切にしているのは、本人を「働かせる」ことではありません。 本人が、自分の人生について自分で考え、納得して選択できるようになること。 そのための時間として、 就労選択支援 があると私たちは考えています。

 

次回予告

「人と関わることが苦手です。」 そんな本人が、ある作業では周囲の人に自然に声をかけ、困っている人を手伝っていました。 本人も、支援者も、最初は気づいていなかった力です。 次回は、「人と関わるのが苦手」だった本人が、意外な場面で見せた力をテーマに、本人の強みをどう見つけていくのかをお伝えします。  

関連記事

学校では見えなかった「本人の強み」が見えてきた 尼崎市の 就労選択支援 の現場から 進路選択で後悔しないために サービスを選ぶ前に考えたい3つのこと【 就労選択支援 】